月別アーカイブ: 2016年6月

えっ、がん細胞に直接放射線を照射 新薬開発 世界初

がん細胞に直接届いて、そこだけに放射線を照射する新たな薬を、日本の研究グループが世界で初めて開発し、マウスで実験した結果、がん細胞を大幅に縮小させることに成功しました。手術を必要とせず副作用もない次世代のがんの治療法につながる成果として注目されています。新たな薬を開発したのは、放射線の技術を医療などに応用するために、ことし4月に発足した国の研究機関「量子科学技術研究開発機構」のグループです。グループでは、加速器と呼ばれる大型の装置で、ビスマスという金属にヘリウムを衝突させ、放射線が及ぶ距離が0.1ミリと短い「アルファ線」を出す、「アスタチン」という物質を作りました。

そして、「アスタチン」に、がん細胞に集まる性質がある物質を組み合わせることで、がん細胞に直接届いて、半径0.1ミリの範囲だけに放射線を照射する新たな薬を世界で初めて開発しました。

グループでは、新たな薬の効果をマウスで実験したところ、2週間後、薬を投与しなかったマウスではがん細胞が3倍に拡大したのに対して、薬を投与したマウスでは、がん細胞が半分にまで縮小したということです。

がんの放射線治療では、がん細胞の周辺にある正常な細胞まで痛めて副作用を起こすことが課題になっていますが、この薬では、それを解決できると期待され、グループでは、7年以内の人への応用を目指しています。

量子科学技術研究開発機構のグループの東達也部長は「手術を必要とせず、患者への負担が少ない次世代のがんの治療法の確立に向けて、大きな一歩だ」と話しています。

ほう、他人のiPS細胞で目の治療 世界初の臨床研究申請へ

他人に移植しても拒絶反応が起きにくい特殊なタイプのiPS細胞を使って、重い目の病気の患者を治療しようという「他家移植」と呼ばれるタイプの世界初の臨床研究を、理化学研究所や京都大学などの研究グループが共同で実施する計画を明らかにしました。1人当たり数千万円かかっていたコストを大幅に下げ、iPS細胞を使った治療の普及にもつながる可能性があると期待されます。

ほう、心筋梗塞と脳梗塞の予測システムを開発

将来、心筋梗塞と脳梗塞になるおそれがどのくらいあるのか、年齢や血糖値などを入力することで簡単に予測できるシステムを国立がん研究センターなどのグループが開発しました。インターネット上で誰でも使えるということで、グループでは「病気の発症予防に役立ててほしいと」話しています。このシステムを開発したのは、国立がん研究センターと藤田保健衛生大学の八谷寛教授などのグループです。

グループでは、茨城県や新潟県など5つの県に住む1万5000人余りを平均16年間追跡し、健康診断の結果を基に40代から60代までの人が、将来心筋梗塞と脳梗塞になる確率を予測するシステムを開発しました。

インターネット上で年齢や血糖値、血圧、それにたばこを吸うかどうかなど8項目を入力すると、今後10年以内に心筋梗塞と脳梗塞になる確率を知ることができるということです。

システムはインターネット上で誰でも使えるということで、研究を行った八谷教授は「健康診断の結果のうち、1つの値だけではなく、全体としてどれぐらいのリスクがあるかを判断できる。例えば喫煙をやめたらリスクがどのぐらい減るかなど試してもらい、発症予防に役立ててもらいたい」と話しています。