パーキンソン病

パーキンソン病とは?

パーキンソン病

1)パーキンソン病の四大症状
・安静時振戦:手足のふるえ、左右差がある。
・筋 固 縮:筋肉が硬く、こわばる。
・無   動:動作がゆっくり、動作が少ない、声が小さい、字が小さい、表情が乏しい、瞬きが少ない、足がすくむ。
・姿勢反射障:バランスがとりにくい、倒れやすい、歩行が小刻み、前屈み。

2)Hoehn&Yahr(ヤール)の重症度分類
Ⅰ 片側の手足等の障害。運動機能障害は軽度。
Ⅱ 両側の手足等の障害。平衡感覚、姿勢反射障害無し。
Ⅲ 中等度。立ち直り反射障害(姿勢反射障害)あり、日常生活での活動制限あり。
Ⅳ 重症。辛うじて歩行立位可能、日常生活での機能障害著明で介助も必要。
Ⅴ 起立・歩行不能。臥床または車椅子生活。

3)どのような経過をたどるのか?
・普通のパーキンソン病は、ヤール3度までに5,5年、5度には15年の経過です。
・若年性パーキンソン症候群は、3度までに19年、5度には40年の経過です。
・個人差大きい。通常、日常生活において発症後10年程度は十分可能。
・平均余命はほとんど変わらない。2年~3年短くなる程度。

4)パーキンソン病の診断
・20歳以後(通常は40歳以上が多い)、徐々に発症。
・四大症状のうち、2つ以上がみられる。
1)安静時振戦(4-6Hz)
2)固縮(歯車様固縮、鉛管様固縮)
3)無動(動作緩慢、動作の欠乏)
4)姿勢反射障害(後方突進現象)
・抗パーキンソン病薬が有効。(運動効果の改善)
・パーキンソン症候群を起こす薬を服用していない。
・症候性パーキンソニズムを除外できる:MRIやCTで明らかな異常所見がない。
・外来できたら、表情と動作の観察でほぼ診断可能。
・四大症状の観察。(安静時振戦と無動)
・診察
⓵筋トーヌスを診察  ⇒ 筋固縮を検出
⓶後方突進現象を診察 ⇒ 姿勢反射障害

5)パーキンソン病の診断の実際
1、外来できたら、表情と動作の観察でほぼ診断可能。
⓵仮面様顔貌         ⇒ 無動。
⓶手足のふるえ        ⇒ 安静時振戦、緊張で震えが増加。
⓷移動や起き上がりの動作が遅い⇒ 無動、動作緩慢。
⓸歩行時の腕を振らない、小刻み、すくみ、前屈姿勢。
2、診察
⓵筋トーヌスを診断  ⇒ 筋固縮を検出。
⓶後方突進現象を診察 ⇒ 姿勢反射障害。
3、パーキンソン症候群を起こす薬を服用していない(ドーパミン受容体に拮抗する作用のある薬)
・抗精神病薬:統合失調症に使用する薬剤はほとんどがパーキンソン病に悪い影響を与える。
・抗うつ薬 :ドグマチールやその他の抗うつ薬。
・胃薬の一部:ドグマチール、ナウゼリン、プリンペランなど。
・その他  :降圧薬の一部。
4、MRIやCTで明らかな異常所見がない。症候群パーキンソニズムを除外できる。
5、最後に、治療効果をみる。抗パーキンソン病薬が有効。

6)パーキンソン病では運動症状以外、多くの非運動症状がある
1、自律神経障害
⓵消火器症状 :便秘、胃、腸管の運動障害
⓶排尿障害  :頻尿(夜間、昼間)、尿意切迫、尿失禁
⓷心血管系症状:起立性低血圧、食事性低血圧
⓸発汗異常  :脂顔、腹部以下の発汗低下、顔面・胸部の発汗過多
⓹性機能低下 :インポテンツ
Q:PDの自律神経は、どこの神経細胞が障害されるのか?
A:全身の末梢性自律神経障害
・腸管、膀胱、尿道括約筋、尿意、血管壁、心臓、汗腺など
2、精神症状
うつ状態、元気がない、動かない、軽度の認知症
⇒ うつと間違われ、最初に精神科・心療内科の受診例も多い。
3、睡眠障害
⓵日中過眠:昼間すぐに横になる患者さんが多い。パーキンソン罹病期間が長い患者さん、L-DOPA、ドパミンアゴニストも誘発要因となる。
⓶REM期睡眠行動異常症:夢の内容に一致した異常行動、恐怖や切迫した状況、寝言、大声、四肢を動かす、暴力的な行動。
⓷不眠症:昼間睡眠、夜間不眠、入眠困難、途中覚醒など。
4、感覚障害
⓵嗅覚低下:早期より発症しているが、本人や周囲は気がつかない。進行するとさらに悪化し、7割~8割の患者は臭覚障害を呈する。
⓶四肢の痛み:五十肩様の症状、運動障害
5、易疲労感。

7)パーキンソン病の進行
・パーキンソン病では、発症前からすでにレビー小体はできており、進行とともに分布が広がる。
・運動前駆症状として、嗅覚障害、便秘、睡眠障害、日中過眠、REM期睡眠行動異常症、不眠症、うつなどがみられる。
・発症時には、運動症状が前傾に出てくる。
・その後、薬による併発症状も出現する:幻覚、妄想、ジスキネジアなど。

8)パーキンソン病の治療は薬だけではない
1.薬物療法     :治療の原則は薬物療法、特に、L-DOPAを中心に、多剤併用療法
2.脳深部電気刺激療法:症例によって非常に有効
3.リハビリテーション:継続的に実施すれば、一定の効果はある
4.教育       :本人および家族の指導と病気に対する教育
5.食事       :便秘になりにくい食事、L-DOPA
6.介護の注意事項

9)脳深部電気刺激療法(手術)
・脳内に電極を挿入し、電気刺激を行う。臨床症状がL-DOPA内服時程度に改善する。
・脳深部電気刺激療法(手術)の患者さんでは、両側の首等にリード線や前胸部に刺激装置があるので、あん摩マッサージ指圧、はりきゅう等の施術には注意が必要。

10)パーキンソン病:リハビリテーションと手技療法のポイント
・五十肩様の肩関節の疼痛、ROM制限など、四肢筋の固縮のためにROM制限が全身の関節に出現する。全身の関節のストレッチ、ROM拡大、関節拘縮予防。
・前傾姿勢になることが多く、腰背部をできるだけ伸ばすような体操。
・下肢の筋力強化、歩行バランス改善。
・構音障害、嚥下障害に対して大声を出す訓練。
・動作・声、運動を大きくするようにイメージ訓練。
・運動や訓練は薬の効いているオン時に行う。

11)すくみ現象 歩き始めの工夫
・リズムをとる⇒「1,2」「1,2」と号令をかける。
・音楽、メトロノーム音(音楽CD):「足下の線や簡単な障害物を乗り越えるなはできる」を利用する⇒養生用のテープを用い、一定の間隔の線を引く。
・患者さんの足の前に足やL字杖を差し出す。

12)すくみ足・方向転換の対応
・前に歩きださない:前に歩くのを歩き出すときに足を一歩引く
一歩 横に足をだす。
片足を高く上げて歩き出す。
姿勢を正し、ゆっくり深呼吸してから歩く。
・歩行器・杖(L字型の杖)
・レーザーポインターの利用
・パーキンソン病の患者さんは、目標に近づくと足がすくむ⇒転倒
・急がば回れ
・遠くを見て歩こう
・目の前のものに飛びつくな

13)パーキンソン病:リスク
・転倒および骨折
・起立性低血圧、食後低血圧による失神
・訓練後の疲労による脱力
・オフ時の座位や動作困難
・訓練時の発汗過多による脱水、血圧低下
・便秘によるイリウス
・排尿障害
・誤嚥・肺炎
・寝たきり・褥瘡